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最新研究報告

食品やサプリメントと前立腺がんの予防

食品やビタミン、ミネラルなどのサプリメントの前立腺がん予防に対する効果に関する3つの論文をご紹介します。

初めにご紹介するのはセレニウムとビタミンEに関する大規模研究です。PSA値が4ng/mL以下かつ触診で前立腺がんの疑いがない症例に対して、セレニウムとビタミンEの摂取が前立腺がんの罹患率に影響を与えるかということについて、SELECT (the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial)という大規模かつ国際的なRCT(ランダム化比較試験)が行われました。427の研究施設で35,533名が参加したこの研究の結果、プラセボ群と比較して、ビタミンEはむしろ前立腺がんの発がんリスクを高めることが明らかになりました。(論文1)

2つ目はイソフラボンに関する研究です。PSA高値で、かつ生検でがんが見つからなかった患者153名に1年間イソフラボンまたはプラセボを無作為割り付けで服用してもらったところ、1年後の生検ではイソフラボン群とプラセボ群でがんの発見率に有意差はなかったものの(21.4% vs 34.0%, p = 0.140)、65歳以上の患者については、イソフラボン群では有意差が生じました。(28.0% vs 57.1%, p = 0.031)(論文2)

最後にご紹介するのはコーヒーとの関係です。コーヒーは多彩なポリフェノールやカフェインを含み、抗酸化作用や糖代謝、性ホルモンレベルに影響を与えることが知られています。47,911名を対象に1986年から4年ごとに20年間調べたデータをもとに、レギュラーコーヒーおよびデカフェインコーヒーの摂取と前立腺がんとの関連を検討したところ、平均で1日6杯以上コーヒーを飲んでいた人は飲んでいない人に比べて致命的な前立腺がんのリスクが死亡リスクとともに低いことがわかりました。ただし、低悪性度または進行していない前立腺がんのリスクとは関連しておらず、高悪性度の前立腺がんとは弱い関連性しかないとのことです。(論文3)

がんや生活習慣病の進行に酸化ストレスが関与することから、抗酸化物質を摂取することでがんのリスクを減らすことができないだろうかという考え方があります。ビタミンEとセレニウムについては期待されるような結果は得られていませんが、一方で大豆イソフラボンが高齢者では有効であるということが示唆されました。コーヒーに関してはカフェインよりもむしろそれ以外の成分の作用が重要であるとみられ、今後のさらなる研究が期待されます。

・論文:
1) Vitamin E and the risk of prostate cancer: the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). Klein EA, et al. JAMA. 306:1549-56, 2011
2) Prostate cancer chemoprevention study: an investigative randomized control study using purified isoflavones in men with rising prostate-specific antigen. Miyanaga N, et al. Cancer Sci. 103:125-30, 2012
3) Coffee consumption and prostate cancer risk and progression in the Health Professionals Follow-up Study. Wilson KM, et al. J Natl Cancer Inst. 103:876-84, 2011

by 事務局スタッフ