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最新研究報告

下部尿路症状(LUTS)には運動療法が推奨されるか

2019.07.11

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LUTS(lower urinary tract symptoms:下部尿路症状)とは、膀胱に尿をためること(蓄尿)や、尿を排出すること(排尿)などが円滑にできなくなっている症状のことです。その評価方法としては、このサイトでもご紹介している国際前立腺症状スコア(IPSS)が用いられています。今回は、このLUTSに対する運動療法の効果に関する3つの論文をご紹介します。

まず最初にご紹介するのは、40歳から79歳の7,318人について、約5年間にわたってIPSSを調査したところ、肥満および身体活動とLUTSの間に関連性を認めたというもの。身体活動性と体重超過を管理することにより、LUTSの危険性を低下させることが示唆されました。(論文1)

2つ目は、前向きコホート研究であるMrOS(The Osteoporotic Fractures in Men Study: 男性の骨粗鬆症性骨折研究)で、LUTSと肥満度、身体活動度の関連を調べたものです。平均年齢72歳の1,695人において、対照群(BMI<25kg/㎡)に比べて過体重群(BMI: 25.0-29.9kg/㎡)では29%、肥満群(BMI≧30kg/㎡)では41%、それぞれLUTSのリスクが高まっていました。BMIで調整した後のデータでも、身体活動度が高いとLUTSの発症リスクは減少するとのことでした。(論文2)

最後にご紹介するのは、56人のLUTS患者を、週3回太極拳を行う群と対照群に無作為割り付けしたというもの。12週後、太極拳群ではLUTSが改善し、QOL(Quality of Life:生活の質)が高まりました。また太極拳群では血中テストステロンが増加していました。(論文3)

これらの研究の結果から、LUTSにも糖尿病と同じく、運動療法が必要かもしれないということが示唆されます。有酸素運動、筋力を使うレジスタンス運動、太極拳のようなアイソメトリック運動で臨床試験を実施することができれば、より実践的で有用な結果が得られるかもしれません。

・論文:
1) Obesity, physical activity and lower urinary tract symptoms: results from the Southern Community Cohort Study. Penson DF, et al. J Urol. 186:2316-22, 2011
2) Obesity increases and physical activity decreases lower urinary tract symptom risk in older men: the Osteoporotic Fractures in Men study. Parsons JK, et al. Eur Urol. 60:1173-80, 2011
3) Tai chi for lower urinary tract symptoms and quality of life in elderly patients with benign prostate hypertrophy: a randomized controlled trial. Jung S, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2012:624692, 2012

by 事務局スタッフ