第7回

2018.06.22 コーヒーに前立腺がん予防の可能性

1日3杯以上のコーヒーのススメ。

井手
この回からは、具体的な食生活改善の提案をしていきたいと思います。

食生活の基本はバランスよく食べることであり、疫学研究や臨床研究によって有効性が認められたものはこれまでのところありません。 しかし前立腺がん発症のスクを減少させる可能性が報告されているものはあります。

まずコーヒーです。ハーバード公衆衛生大学院では47911名の男性を対象に、1986年から4年ごとにフォローを行う大規模研究が行われました。前立腺がんに罹患した642人の追跡調査を行い、前立腺がんの再発や進行について調べたのです。

結果、1日6杯以上のコーヒーを飲む人は、飲まない人と比べると、前立腺がんの発症リスクが18%低く、死に至るような悪性前立腺がんのリスクが60%低いことが判明しました。
──
1日6杯以上ですか。 それはだいぶ多い印象がありますね。 むしろ飲み過ぎのような気もしてしまいます。
井手
カフェインがもたらす神経の興奮や胃への刺激、利尿作用によるカルシウムの排出などがそのような印象を与えるのでしょうが、コーヒーは糖尿病や脳卒中などのリスクを下げるというデータも発表されています。

日本人を対象とした疫学研究においても、1日に3杯またはそれ以上コーヒーを飲む人は、前立腺がんになるリスクが40%低いという報告があります。
──
よほど大量に飲まない限り、過度に心配する必要はないということですね。
井手
発症予防の機序はわかっていませんが、そう思います。しかも大規模研究では、カフェインの入ったコーヒーでも、カフェインレスでも同じ結果がもたらされ、カフェイン以外の成分の有用性が示唆されています。
──
カフェイン以外とは。
井手
コーヒーはミネラルやポリフェノー類を含みます。なかでもコーヒー特有の苦味や香りを作る「クロロゲン酸」というポリフェノールは、カフェインより含有量では上回っているのです。クロロゲン酸は、多くの種類のがん発生や進行に関与する生化学的な抗酸化成分のひとつとして知られています。

生活の質の改善で、テロメラーゼも活性化!

──
朝の目覚めの1杯に、仕事の合間に、外で人と会った時になど、私たちはさまざまなシーンでコーヒーを飲んでいますが、おすすめの飲み方というのはありますか?
井手
そうですね。 コーヒーに含まれるカフェインには、脂肪燃焼を助ける働きがあります。そのため、ウォーキングやランニング、サイクリングのような有酸素運動の運動効果の向上には有効な飲み物だと思います。
──
肥満は前立腺がんの強力なリスク因子。 運動不足と食生活が前立腺がん発症に関連しているといった疫学研究は数え切れないほどあるというお話にも関連しますね。
井手
ただし、コーヒーは運動30分前に飲んで、有酸素運動は20分以上続けての効果です。

そしてできればブラックコーヒーで。ブラックならカロリーは6〜8kcal程度です。
──
今さっと調べてみたのですが、ミルクや砂糖を入れると40kcal超え、カフェオレにいたっては80kcal近くなってしまうようです。
井手
カフェインは30分くらいで体内にしっかり取り込まれ、取り込まれると2~3時間くらいは効果が持続します。
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嗜好品でありながら機能性食品としても期待できるコーヒーは、取り入れない手はないですね。 アスリートにもコーヒーを愛飲している人が多いのにも納得です。