第3回

2018.05.25 日本人は本来、前立腺がんに罹患しづらい人種です。

前立腺がんのリスク因子「加齢」「遺伝」「人種」。

──
第1回、2回ではPSA検査についての理解を深めてきましたが、ここからは前立腺がんのリスク因子についてうかがいたいと思います。
井手
リスク因子には、自分では防ぎようのないものと、防げるものがあります。 防ぎようのないリスク因子から話しますが、まず「加齢」。 前立腺がんは典型的な高齢者のがんなので、「加齢」は誰にでもあてはまるリスク因子です。 実際70歳を過ぎると増えます。

この連載の第1回目で前立腺がん患者が増えている背景に、PSA検査の普及があるというお話しをしましたが、高齢化社会も無視できません。2017年に厚生労働省が好評した日本人男性の平均寿命は80.75歳。過去最高を更新しましたよね。
──
調べてみたところ、男性の平均寿命が70歳を超えたのは1980年代に入ってからでした。

内閣府公表の高齢社会白書「平均寿命の将来推計」によると、平均寿命は今後も伸びると予想され、2060年には男性は84.19歳に、女性は90.93歳になるそうです。

ちなみに調査が始まった明治24~31年の平均寿命は男性は42.8歳、女性は44.3歳。いかに近代に入って日本人が急速に長生きするようになったかがわかりました。
井手
だからこそ、予防をますます考えていかなれければなりません。とくに家族歴がある方は、やはりPSA検査を早い段階で行うくことをおすすめします。30代から始めてもいいと思います。 なぜなら前立腺がんの約1/4に家族歴があるからです。

遺伝子研究によって、前立腺がんの発症には遺伝的要因が深く関わっていることが明らかになってきています。

父親が前立腺がんの場合、そうでない人に比べて、2.12倍自分もがんになるリスクが高くなります。兄弟の場合は、約2.87倍。 父親にせよ兄弟にせよ、50歳くらいの比較的若い時期に発症している場合は、注意するにこしたことはありません。
──
人種に関してはどうなのでしょうか。
井手
黒人種、白人種、黄色人種の順と言われています。しかし、生活習慣も重要です。 統計では「スイス」「ノルウェー」「スゥエーデン」がトップ3を占めています。
前立腺がんの頻度はアジアでは低い
井手
そしてスイス、ノルウェー、スゥエーデンに共通するのは?
──
酪農国ということですか。
井手
そうです。 牛乳やチーズなど脂質の多い食事との関連が言われています。同じ日本人でも、日本で暮らしている人よりハワイやアメリカ本土で暮している人の方が前立腺がんの罹患率が高いという報告もあり、食生活と前立腺がんには密接な関係が示唆されています。
──
日本人の食生活も30年間で大きく変化しました。欧米食の影響は多大に受けているのが現代人ですよね。人種的にも前立腺がんの頻度はアジアは低いなかで、日本人が28番目に入っているのが気になります。
井手
食生活については、改めて回を設けてじっくりお話ししますね。